味わい艶めく小手の舞
ピカピカに磨かれた鉄板の上を、小手を握った女将・平谷ひでのさんの手がしなやかに行き交う。
日舞の型を思わせる無駄のない動きは、福原の芸妓さんや旦那衆の御用達だった鉄板焼の『美丁』仕込み。
「人に見られているから失敗できないでしょ。先輩の技を毎日見て練習してましたよ」。
白衣の女性がカウンターのお客の前で調理するのが、往時の『美丁』のスタイル。
震災であえなく店を閉めた店主の意志を継ぎ、どんなに忙しくともリズムを乱すことがない白衣姿の平谷さんが、花街の名店の情趣を伝える。
品書きも当時そのまま。定番の粉焼きが焼き上がるまでのひとときが、
ふっくらした生地の味わいを、一層ふわりと華やかに広げるようだ。