世間話がのんびり飛び交う 公園に寄り添うのどかな喫茶店
みなえんタウンの入口から、オレンジ色のテントを目指して急な坂を登り切ると、道を挟んで向こうには湊川公園。「昔は大きな噴水があって、新開地タワーにニュース館、遊園地やら、公園の中にも店がありましたよ」と言うのは、『小町』二代目店主の中山裕章さん。
幼い頃、タワーに上がったこともあったそう。「ハシゴを組んだみたいなもんで、階段で頂上までいきましたわ。よう揺れて恐かった(笑)」。その面影もなくなったが、今も公園の移り変わりを静かに見つめている。
昭和32年のクリスマスに純喫茶として開店。震災で一度は全壊したが、カウンターの周りは当時のまま。お花のような赤い照明が、どことなく店の名前に似つかわしい。今は界隈の店の主人ら、公園名物の青空将棋にどこからともなく集まってきた人々が訪れる。
「2、30年前はこの辺に草野球チームが6つあって、”新開地リーグ”いうて荒田のグラウンドでよう早朝野球してました」。時には、かつて白球を追った面々が顔を出す。夏の暑い盛りには懐かしい「氷すいか」でひと涼みするおっちゃんの姿も。勝手知ったる仲、世間話に興じる店内は、公園の雰囲気にも似てのんびりと時間が緩んでいく。
(「アレッ!新開地vol.24」より)