世間話がのんびり飛び交う 公園に寄り添うのどかな喫茶店
『パルシネマしんこうえん』からミナエンタウンをまっすぐ奥へ。ちょうど突き当たりに『光線』の看板が灯る。ミナエンタウン完成とほぼ同時に開店。
「子供の頃、聚楽館にスケートに来たことがあって。松竹座や松竹劇場の前はすごい人だかりでしたよ」。そう振り返る奥さん。当時は劇場帰りの人だけでなく、舞台に出ていた手品師も顔を見せたそうだ。
店内は、鮮やかなオレンジのキャンディライトにモダンなアールが付いた白いテーブル、懐かしい黒電話も開店時から全く変わっていない。
「ずっとコーヒー一本でしてきたようなもんや」とは店主の井上さん。ネルドリップのコーヒーに、軽食と言えばトーストくらい。一杯のコーヒーとお客との会話が、煩わしい時間を忘れさせる。
「うちが残っているのは、淡々と怠けず続けて来たから。」何気ないやりとりが時を止めた喫茶店には似つかわしい。
それにしても喫茶店の名前には変わったものも多いが、これほどシュールな響きは覚えがない。「創業した伯母さんが名字の『松本』と悩んで、確か字画がよかったから決めたのかな?」との事だが、由来の程は薮の中。とはいえ35年を経たこの店の存在感は、一条の光に似て色褪せることはない。